赤ちゃん・子供の夜泣きに効く薬

赤ちゃんや子供の夜泣きに効く薬は、現代医学(西洋医学)の分野では存在しません。精神医学での治療対象には、代表的な精神疾患として統合失調症と躁うつ病がありますが、赤ちゃんや子供の夜泣きは、これらの症状とは見なされていません。また、内科医の一部には、夜泣きを安易に自律神経失調症によるものとする向きもありますが、そもそも自律神経失調症(交感神経と副交感神経のバランス異状)という病名は、原因の特定できない漠然とした体調や気分の不良を指す言葉として使われることが多く、本来の自律神経失調症であれば、心療内科や精神科での治療が必要となります。現代医学においては、夜泣きは乳幼児期によく見られる現象ではあっても、けっして病気ではなく、成長とともになくなるものとされています。したがって、その治療薬もありません。

赤ちゃんや子供の夜泣きは、日本古来の東洋医学では「疳(かん)の虫」と呼ばれた空想上の虫が原因とされてきました。そのため、「疳の虫」を退治する「疳の虫封じ」の風習や、それにご利益があるとされる地蔵信仰などが全国に広まっていました。さすがに、現代では「疳の虫」の実在など信じられてはいません。しかし、古来より調合され服用されて夜泣きに効くとされる生薬製剤があり、現代でも多くの人々に愛用されています。

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赤ちゃん・子供の夜泣きに効くとされる生薬製剤として代表的なものは、東日本では「宇津救命丸」(うづきゅうめいがん)であり、西日本では「樋屋奇応丸」(ひやきおうがん)です。両方とも、テレビコマーシャルなどでもお馴染みの薬です。宇津救命丸は、慶長2年(1597)に発売された「宇津の秘薬」が始まりとされ、樋屋奇応丸も、江戸時代に李氏朝鮮と親交の深かった対馬藩の輸入品"朝鮮人参"が調合されているということで愛用者が増えたと言われており、ともに、江戸時代以来、越中富山の名薬「反魂丹」とならぶ人気の薬でした。宇津救命丸も樋屋奇応丸も、赤ちゃん・子供専用の薬ではありませんが、両方とも小粒の丸薬であり、しかも匂いの気にならない糖衣錠も発売されていますから、乳幼児にも飲みやすいのが特長です。今でも夜泣き対策の薬としてよく利用されています。

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